ストーリー

2017年 夏

それは2017年の夏の事でした。その日群馬県富岡市は40度近い気温、富岡製糸場を訪れる観光客の多くは日傘をさして歩いています。そんな中観光バスから降りてきたお客様が当店に駆け込んで来るや否や「帽子を売っていませんか?」「暑い!暑すぎます」と。
しかし残念ながら当店では帽子の取り扱いはしておらず、お客様のご要望には応えられませんでした。その時対応したのがわたくし前原和夫でした。私はお客様の残念そうな顔が目に焼き付いて離れず、すぐに帽子を仕入れようか考えましたが一般的な麦わら帽子を扱うことは簡単なこと、しかしシルク専門ショップと謳っているのですから、シルクで帽子を作ってみようと思い立ったのでした。

 

私は早速、群馬県内で帽子を製造してくれる工場を探すため、検索でヒットする帽子販売店に何件か電話をかけてみましたが、帽子を作っているところは見つかりません。群馬県内では帽子つくりは無理かもしれない、とあきらめかけていた最後の1件に電話をしたところ、帽子職人さんがいることが分かりました。それが群馬県桐生市にあるcompositionさんでした。
2018年1月、群馬県富岡市産のシルクをもって事務所を訪れ、代表の齋藤様にシルクで帽子を作りたいのですが、と生糸を差し出しました。え?生糸ですか?正直、シルクを生地にして帽子を作るのはわかりますが、生糸からですか?と驚いた様子でした。やっぱり無理ですかね?と問いかけたら、齋藤様はしばらく沈黙したあとに、「シルクでブレードが作れたら帽子は作れるかもしれませんよ」私は思わず「本当ですか!?」と飛びついたように聞き返しました。ただそれには、生糸が細すぎます!もう少し太い糸はできませんか?太ければ「ブレード(リボン)」を編むことができるかもしれません。太い糸かぁ・・・私はお店で扱っていた「絹のブラシ」をお見せしたところ、齋藤様が「シルクの背中ブラシ」に使用している極太シルク(生糸は200デニール)に目が留まり「これならいけるかもしれないですよ!」と言っていただき、その場でシルクブレードの制作を依頼したのです。

そして2カ月後、シルクのブレードが完成したと連絡がありました。7ミリ幅の細いリボンですが、よく見ると、太い糸を蛇行して編んでおり、素人ながら凄い技術が詰まっているように感じました。時を同じく、地元群馬県のテレビ局が帽子職人の技をテレビで紹介したいと、たまたま撮影日がかさなり、シルクハットを制作するシーンを番組で取り上げてもらい、まさに純国産富岡シルクブレードハットが世に誕生した瞬間でした。
その後、形やカラーを少しずつ増やしていき、お客様の声を繁栄しながら改良を加え2019年には「おもてなしセレクション2019」の受賞も頂きました。また2020年には西武池袋本店での展示会、ホテル椿山荘東京での展示会、など都内での活動も増え、純国産富岡シルクブレードハットが多くの人に知って頂くことができました。
これからも、被った瞬間に笑顔になって頂けるような純国産富岡シルクブレードハットを提供してまいります。

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